爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:タイムマシン)没作【タイムマシン適正試験】

2020年9月10日

 二〇XX年。経営不振が続いていた世界的大企業のN社が記者会見を開いた。ついに倒産かと集まった記者達は、そこで衝撃的な発表を耳にすることとなった。

「みなさま、お集まりいただきましてありがとうございます。実は我がN社では、極秘にタイムマシンの研究を続けてきました。そして、ついに我N社はタイムマシンを完成させました。本当はすぐにでも販売をしたいのですが、人々が私利私欲のためにタイムマシンを使ってしまうと、世の中が混乱してしまう恐れがございます。そこで我がN社は、タイムマシン適性試験を世界各国で開催し、その合格者のみにタイムマシンを無料で差し上げることを決定致しました。タイムマシン適性試験は受験料を払えばどなたでも受験可能ですし、一度不合格になっても受験料を払えば何度でも再試験可能です。また、試験に合格された方にお願いしたいのですが、合格したことを公表してしまうと、タイムマシンを誰かに狙われてしまう恐れがございますので、絶対に合格したことは内緒にしていてください。もし公表してしまった場合は、免許を剥奪しタイムマシンも没収致しますので、くれぐれもご注意を。それではみなさん、ぜひタイムマシン適正試験を受けてみてくださいね」

 N社の発表を受けて、世界中からタイムマシン適正試験の受験希望者が殺到した。受験料はかなりの高額だったものの、タイムマシンをもらえるかもしれないという夢のような話に人々は歓喜し、受験希望者は後を絶たなかった。

 タイムマシン適正試験の受験料収入により、N社は驚異的な利益を上げ、この前までの経営不振は嘘のようにV字回復した。

 N社がタイムマシーン適正試験を始めてから、十年が経過した。公には公表されていないが、タイムマシン適正試験の合格者は、未だに一人も出ていない。