失恋ばんざい(小説現代ショートショートコンテスト没作)

 とあるバーのカウンターで、男が一人、ウイスキーを飲んでいる。

 その男から二つ離れた席でも、女が一人、ウイスキーを飲んでいた。

「良かったら一緒に飲みませんか?」

 男が女に話しかける。

「ええ、どうぞ」

 男は片手にグラスを持って足をふらつかせながら、女の隣へと座る。

「実は私、ずっと片思いをしていた男性に振られてしまいまして。それで、普段は飲まない強いお酒で気分を紛らわせていたんです」

「偶然ですね。実は僕の方も、片思いをしていた女性に振られて、やけ酒をしていたんですよ」

 こうして二人は意気投合し、やがて二人は付き合うことになった。

 その後も交際を続け、バーでの出会いから二年後、二人はめでたく結婚した。

「もしもあの時、どちらか一人でも振られていなかったら、僕達の出会いはなかったんだよなあ」

「そうよね。あの時は失恋して落ち込んでいたけど、今になって考えたら、その方が良かったのよ」

「失恋バンザイだな」

 

 とあるバーのカウンターで、男が一人、カクテルを飲んでいる。

 その男から二つ離れた席でも、女が一人、同じカクテルを飲んでいた。

「良かったら一緒に飲まない?」

 男が女に話しかける。

「ええ、いいわよ」

 男は片手にグラスを持って、女の隣へと座る。

「君、本当にきれいだね」

「あなたの方こそ、すごいイケメンね。今までさぞ多くの女性を泣かせてきたんじゃないの?」

「実はついさっき、女の子を振ってきたばかりなんだ」

「偶然ね。私の方もついさっき、男を振ってきたばかりなのよ。お互、罪作りね」

 こうして二人は意気投合し、やがて二人は付き合うことになった。

 その後も交際を続け、バーでの出会いから二年後、二人はめでたく結婚した。