手術(小説現代ショートショートコンテスト没作)

 それは突然の電話だった。

「もしもし、武田さんの奥様でしょうか?」

「はい、そうですが?」

「落ち着いて聞いてください。旦那さんが犬の散歩中に車に轢かれまして……」

 私は娘と一緒に、慌てて病院へと向かった。

「かなり危険な状態ですが、最新の手術をすればまだ助かる見込みはあります。ただし、手術の症例が少ないため、成功するかどうかは未知数です。さらに手術代はこのように高額となっておりますが、いかが致しましょうか?」

「いかが致しましょうかって、手術するに決まってるでしょ。私達の大切な家族なんですから」

「でもお母さん、お金大丈夫?」

「心配いらないわ。もうすぐ臨時収入が入るから」

 手術が始まった。手術は十時間以上にも及び、その間、私と娘はただひたすら無事を祈った。

「武田さん、手術は成功しました」

 先生のその言葉を聞いて、私は娘と泣きながら抱き合った。

 こうして、私、娘、そしてポチとの、新たな家族生活がスタートした。