こんなに(小説現代ショートショートコンテスト没作)

 私の夫はお酒が大好きで、毎日の晩酌は欠かせない。そんな夫だが、この前の健康診断に引っかかってしまい、お医者さんから一ヶ月の禁酒令を出されてしまった。

 一ヶ月後。

 私は夫から頼まれたちょっと高めの日本酒を用意して、夫の帰りを待っていた。あっ、帰ってきたわ。

「お帰りなさい」

「ただいまー」

「お酒用意しておきましたよ」

「おっ、それは楽しみだ。早く着替えてくるよ」

 夫が着替えをしている間に、私は一升瓶から大きめのグラスにお酒を並々注いで、すぐに飲めるようにと準備をしておいた。

「あなた、どうぞ」

「久しぶりだし、こんなに飲めるかな」

「大丈夫よ。明日はお休みだし」

「それじゃあ遠慮なく、いただきまーす」

 夫はグラスの横に置いてあった一升瓶を持つと、ラッパ飲みを始めた。