爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:政治家)没作【不器用な女】
私は昔から不器用な女で、物覚えが悪く、新しいバイトが決まってもすぐ首になってしまう。
今日も丁度、コンビニのバイトを首になったところだ。
コンビニのバイトというのは、私にとってはあまりにも難し過ぎる仕事だった。レジ打ちに公共料金の支払い、おでんの仕込みに店内の掃除などなど……。一つの仕事を覚えるだけで精一杯の私には、勤まるはずなどなかった。
落ち込みながら家路についている途中で、見知らぬ女性に声をかけられた。
「突然すみません。政治の世界に興味はありませんか? 私、こういう者です」
渡された名刺には、野党第一政党の名前が書いてあった。
「あなたにぜひ、この党の政治家になってもらいたく、声をかけさせてもらいました」
「私なんかが政治家になれる訳ありませんよ」
「そんなことありません。今、世間では女性の社会進出が叫ばれています。あなたのような若い女性が立候補すれば、簡単に当選できますよ」
「いやいや絶対無理ですって。それにもし万が一当選したとしても、私、不器用で物覚えが悪くて、コンビニのバイトすら満足にできないようなダメ女なんですよ」
「大丈夫ですよ。うちの政党の仕事はただ、与党のやることなすことに全部反対するだけの、誰でも出来る簡単な仕事ですから」
その後、私は選挙 で見事当選し、晴れて政治家となった。
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