爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)没作【宇宙缶】

 宇宙開発が進み、太陽系内の惑星なら民間人でも行けるような時代になった。とは言っても、宇宙旅行は非常に高額なため、庶民にとってはまだ遠い夢であった。

 母さんとスーパーで買い物をしていた僕は、その売り場に思わず目が留まった。宇宙缶コーナーと書かれたその売り場には、水星缶、金星缶、火星缶、木星缶、土星缶、天王星缶の六種類の缶詰が並んでいた。

 当時小学生だった僕は、宇宙旅行へ行くのが夢だった。しかし、僕の家は貧乏だったため、行けそうにはないと子供ながらに感じていた。だけどこの宇宙缶くらいなら、もしかしたら買ってもらえるかも。そんな淡い期待を込めて、僕は母さんに頼んだんだ。

「お母さん、宇宙缶買ってよ」

「宇宙缶? そんなのがあるのね。えーと、缶の中にはその星の空気が入っています、ですって。本当かしら?」

「お母さん、買ってよ。一つだけでいいからさ」

「仕方ないわね。一つだけよ」

「やったー。どの星にしようかな」

 当時の僕は、宇宙缶の底にひっそりと書かれていたその言葉の意味を、まだ理解できなかった。 

『MADE IN CHINA』