爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:推理もの)没作【二人の刑事と恋人】
A刑事とB刑事が殺人現場に向かうと、そこには殺害された被害者の男と、容疑者の二人の女性がいた。その容疑者を見たA刑事とB刑事は驚いた。何とその容疑者は、A刑事の恋人のA子と、B刑事の恋人のB子だったのだ。
A子「A君、私はやってないわ。早く私の無実を証明して」
A刑事「わかった。俺が必ずA子の無実を証明してみせるよ」
B子「B君、私はやってないわ。早く私の無実を証明して」
B刑事「わかった。俺が必ずB子の無実を証明してみせるよ」
殺害された被害者の男は、何やら不自然に、右手だけ伸ばした状態で倒れていた。
それを不審に思ったA刑事は、被害者の右手を持ち上げてみた。するとそこには、B子と書かれたダイイングメッセージが残されていた。
A刑事「これは決定的な証拠だ。犯人はB子で間違いない。B刑事、残念だったな」
B刑事「いやちょっと待て。このダイイングメッセージは犯人がB子に罪をなすりつけるために書いたもので、被害者は死ぬ間際、無実のB子を助けるためにこの文字を右手で消そうとしたがそのまま力尽き右手に隠れる形となった、と考えられる。つまり犯人は、A子で間違いない。A刑事、残念だったな」
A刑事「何を言ってるんだ。被害者がこのダイイングメッセージを隠したのは、犯人にダイイングメッセージを残したことをばれないようにするためだと考えるのが自然だろう。B刑事、自分の恋人が犯人と信じたくない気持はわかるが、私情は挟まないでもらいたいね」
B刑事「それはこっちのセリフだ。普通に考えたら犯人はA子で間違いないだろ。早くA子を逮捕するぞ」
A刑事「いや、犯人はB子だ」
B刑事「いやA子だ」
二人の刑事が激しい言い合いをしていたその時、新人刑事がやってきた。
新人刑事「A刑事、B刑事、被害者男性の新たな情報が入ってきました。被害者の男性はIT企業の若手社長で、A子とB子という二人の愛人がいたそうです」
A刑事「なんだって! A子、本当なのか?」
A子「ごめんなさい。だけど、本当に愛しているのはA君だけよ。だからお願い。私の無実を証明して」
B刑事「なんだって! B子、本当なのか?」
B子「ごめんなさい。だけど、本当に愛しているのはB君だけよ。だからお願い。私の無実を証明して」
A刑事「やっぱり俺の推理は間違っていたようだ。犯人はB刑事の言う通りA子で間違いない。早くA子を逮捕しよう」
B刑事「いや、間違っていたのは俺の推理の方だ。犯人はB子で間違いない。早くB子を逮捕しよう」
A刑事「いや、犯人はA子だ」
B刑事「いやB子だ」
二人の刑事の押し問答は、いつまでも続いた。
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