爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)採用作【近い人】
私が大学で知り合った一郎という男は、近い人であった。一郎は、友達から初対面の人にまで、とにかく距離が近いのだ。会話をする時は、唾が付きそうな距離まで近付かれるため、かなり迷惑だった。その点を除けば悪い奴ではないのだが、どうしてもその近さには慣れることができなかった。今までにも、近い人には何度か出会ったことがあったが、一郎は別格だ。いったい一郎は、どうしてこのような近い人になってしまったのだろうか?
一郎は大学の夏休みを利用して、実家の古びた六畳一間の小さなアパートへと帰省した。
「ただいまー」
「お帰りなさい。大学生活はどう?」
「一郎兄ちゃんお帰り」
「兄貴お帰り」
「兄さんお帰り」
「兄ちゃんお帰り」
「兄ちゃんお土産買ってきてくれたー?」
「お兄ちゃん、お姉ちゃんがいじめるよー」
「違うわよ、五郎が私のお菓子を食べたのよ」
「こらこら、喧嘩はやめろよ。一郎お帰り」
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