爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:謝罪)没作【守秘義務】

 ホテルで働いていると、たまに有名人のお忍びカップルがやってくることがある。時々アホなホテルマンがその情報をツイッターでバラしてしまい問題になることがあるが、私のような一流のホテルマンは、そんなヘマは絶対にやらかさない。そう思っていた。しかしたった今、私はその守秘義務を破ろうとしている。

 というのも、私がプライベートでこっそり応援しているアイドルの大島敦子ちゃんが、若い男と二人で私のホテルにやってきたのだ。私は今日までの約三年間、給料のほとんどを彼女の握手会やグッツを買うことに捧げてきた。それなのに……なんてひどい裏切り行為なんだ。私はトイレの個室に入ると、スマートフォンを取り出し、敦子ちゃんのこの秘密をツイッターで暴露してやろうとした。その時、ツイッターのタイムラインに敦子ちゃんの新しいツイートがきていることに気がついた。

『今日は東京に遊びにきたお兄ちゃんとデートなのだ!』 

 そのツイートと一緒に表示されていた写真には、さっきホテルで敦子ちゃんと一緒にいた男が顔だけ隠されて写っていた。私は一度でも敦子ちゃんの純潔を疑ってしまった自分の愚かさを恥じた。ごめんね敦子ちゃん。もう二度と疑ったりしないからね。 

「なあ敦子、変装とかしなくても大丈夫なのか?」

「ふふふ。それが大丈夫なの。このツイート見てよ」

「おお! 敦子頭良いな。下手に隠すよりも、こっちの方がバレなさそうだな」

「えっへん。ナイス作戦でしょ」