爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)没作【レールに敷かれた人生】

 俺の父親は、会社の社長だ。いずれは俺も、この会社を継ぐことになる。いわゆる、レールに敷かれた人生ってやつだ。レールに敷かれた人生なんてつまらない、なんて言う奴もいるが、俺は満足している。

 頑張って勉強して一流の大学に入れたとしても、一流企業の会社に就職できる保証などない。だが俺は、会社の社長という人生を保証されている。レールに敷かれた人生は、本当に最高だ。 

 ある日の学校の帰り道、道の真ん中に小石が落ちていた。なにげなくその小石を蹴り飛ばすと、俺の家の前に停車していた高級車に当たってしまった。それも運悪く、車には人が乗っていた。

「おい、くそガキ。何してくれてんだこの野郎!」

「す、すみません」 

 その時、家から父親が出てきた。

「中川様、どうなされましたか?」

「どうもこうもないよ社長さん。このくそガキが俺の愛車に傷をつけたんだよ」

「申し訳ございません。これは私の息子でして」

「何だと! 社長さん、あんたどんな教育してんだ。もうこの会社との関係はこれまでにしてもらうよ」

「ちょっと待ってください。おい、お前も頭を下げろ」

「す、すみません」

「前からあんたのとこの製品には不満があったんだ。それでも、昔からの付き合いだから、妥協して買ってやってたっていうのに。これで踏ん切りがついたよ」 

 あの高級車に乗っていた男は、父親の会社にとって一番の得意先の社長さんだったらしい。俺が小石を車に当ててしまったせいで、大事なお得意先を失ってしまい、父親の会社の経営は悪化した。俺は父親から勘当され、バイトをしながら細々と一人暮らしをしている。レールに敷かれたはずの俺の人生は、小さな置き石一つで脱線してしまった。