爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:トンネル)採用作【パラレルワールド】

 仕事の帰り道。いつも通るトンネルの前に、何やら看板が置かれており、そこにはこう書かれていた。

『このトンネルの先は、この世界とそっくりのパラレルワールドへと繋がっている』

 何だか気味が悪いなあと思いながらも、このトンネルを通らなければ奥さんと子供の待つ家に帰れないため、私は仕方なくトンネルを通って帰宅した。

「ただいまー」

「おかえりなさい」

「パパおかえりー」

 あれ? 俺の奥さんって、こんな声だっけ? それに子供は、もうちょっと小さかった気がするし、何か変だな。

 その後も、奥さんが作る料理がいつもよりもまずく感じたり、お風呂のお湯加減がいつもよりぬるく感じたりなど、妙な違和感が続いた。

 翌日。あのトンネルの前に行くと、突然知らない男に話しかけられた。

「あのーすみません。昨日、このトンネルを通りましたか?」

「はい。通りましたけど」

「トンネルの前に置かれていた看板はご覧になりましたか?」

「はい。見ましたけど」

「その後、何か妙な事はありませんでしたか?」

「はい。ありましたあしました。一見いつもと変わらない感じなんですが、妙な違和感を感じることが多くて、何だか気味が悪かったんです。もしかして私、本当にパラレルワールドにきてしまったんでしょうか?」

「それはどうもすみません。実は私、こういう者でして」

 渡された名刺には、心理学の教授と書かれていた。

「実は昨日、トンネルの前にあの看板を置いて心理学の実験をしていたんです。人は思い込みの強い生き物でしてね、ああいう事を書かれた看板を見た後だと色々と疑い深くなって、本当にパラレルワールドに来てしまったんじゃないかと勘違いしてしまう人が結構いるんですよ。あなたみたいにね」

「なんだそうだったんですか」

「実験にご協力ありがとうございました。これはほんの謝礼金です」

 男から手渡された謝礼金の千円札には、ストレートヘアーの野口英世が描かれていた。