爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:犬)没作【パブロフの豚】
私の名はパブロフ。つい先日、犬を使った条件反射の実験を成功させた、今ノリに乗っている生理学者だ。
実験内容について簡単に説明すると、数匹の犬達にメトロノームの音を聞かせた後、エサを与える。これを毎日繰り返す内に、犬達はエサを与えなくとも、メトロノ―ムの音を聞いただけでよだれを垂らしてしまう、というものだ。
実は私、これと同様の実験を豚でも並行して行っていた。しかし、メトロノームを何度豚に聞かせても、エサを見せるまでは決してよだれを垂らさなかった。豚はただぶくぶくと太っていくばかりで、一向に実験が成功する気配はなく、豚のエサ代ばかりが嵩んでいった。
そして三日前、買い溜めしておいた豚のエサが底をついたのを機に、私はこの実験の中止を決意した。 今日はその豚達を養豚場にでも引き取ってもらおうと、久しぶりに豚のいる実験室に向かっていた。あっ、ついいつもの癖で、メトロノームを一緒に持ってきてしまった。まあいいか。せっかくだし、最後にダメ元で聞かせてみるか。
私は実験室に入ると、すぐにメトロノームを動かした。
「カチッ、カチッ、カチッ、カチッ」
すると驚いたことに、豚達がよだれを垂らしながらこちらに向かってくるではないか。この土壇場で、見事実験が成功したのだ。よしよし、良くやったなお前ら。でもゴメンな。今はエサがないんだよ。痛っ、こらこら噛むのはやめなさ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……。
こうして私は、豚達に食べられてしまった。