爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)没作【妊娠11か月】

 妻は出産予定日を過ぎても赤ちゃんの生まれてくる気配がなく、とうとう妊娠十一カ月目を迎えていた。そして今日、ついに妻に陣痛がきた。その日は休日だったため、私が車で病院まで送り、そのまま出産に立ち会うことができた。

 陣痛から五時間が経った頃、ついに赤ちゃんが生まれた。

「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」

「ありがとうございます。無事に元気な子が生まれて本当に良かった」 

 その後、私はずっと我慢していたトイレを済ませ、手を洗っていた。その時突然、大きな揺れがきた。今まで経験したことのないような激しい地震で、私は洗面台につかまりながら、立っているのがやっとの状態だった。 揺れが収まると、私は慌てて妻と赤ちゃんのいる病室へと向かった。

「大丈夫か!」

「うん。赤ちゃんも無事よ。すごい揺れだったわね」

「ああ。でも出産中じゃなくて良かったな」

「本当ね。あっ、うちのアパートは大丈夫かしら? あのアパートかなり古いから心配だわ」

「確認してくるよ」  

 うちに戻った私は愕然とした。私達の住んでいたアパートは、跡形もなく崩壊していたのだ。

 もしも今日妻に陣痛がきていなかったら、もしくは予定日通りに妻が子供を産んで退院しここに戻っていたとしたら、私達家族は間違いなくアパートの下敷きになって死んでいただろう。

 もしかしたら、あの子は私達家族を守るために、妊娠十一カ月目のこのタイミングで生まれてきてくれたのかも知れない。