爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)没作【ネコの親】
黒猫が僕のことを見ている。もしかして、君はクロ?
三年前、公園の片隅に、段ボールに入った捨て猫がいた。僕はその真っ黒な捨て猫に、クロと名付けた。僕が当時住んでいたアパートは、ペットが禁止だったからクロを飼ってはあげられなかった。だけどクロが心配だった僕は、給食の牛乳を飲まずに取って置いて、学校帰りにクロに飲ませてあげていた。そんな生活が一か月くらい続いたある日、クロは突然いなくなった。段ボールごとなくなっていたから、新しい飼い主が見つかったんだと思って安心した。ちょっと寂しかったけど……。
その一か月の間だけ、僕はクロの親だった。子供の顔を忘れる親なんていやしない。あの黒猫はクロだ。親だった僕が言うんだ。間違いない。クロに声をかけようとしたその時、黒猫の後ろから、もう一匹黒猫がやってきた。
あれ? あの黒猫も、クロにそっくりだぞ。どっちが本物のクロなんだ? まあいい。本物のクロだったら、親だった僕のことを覚えてくれているはずだ。声をかけたら寄ってきてくれるだろう。
「クロ。こっちにおいで」
二匹の黒猫は、僕から逃げるようにして走り去って行った。
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