爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)没作【孤児】

「あのー、院長」

「どうした?」

「この施設に入所したいという電話がきたんですが」

「どういう子なんだ?」

「杉田栄一君という子で、両親が交通事故で亡くなってしまい、預かってくれる親戚もいないそうです」

「そうか。かわいそうに。年齢は?」

「それが、さっきの情報以外は何も話したがらないんですよ。結構低い声だったので、中学生以上だとは思うんですが」

「とりあえずここにきてもらおうか。詳しい話は会ってから聞いた方がいいだろう」

「わかりました」  

 翌日。

「あのー、昨日電話した杉田栄一だけど」

「えーと、栄一君はどこにいらっしゃるんですか?」

「だから、僕が栄一だよ」

「あなたどう見ても大人じゃないですか。入所は十八歳未満じゃないとできませんよ」

「何でだよ。僕はお父さんとお母さんの子供だぞ。だから僕は孤児なんだ」

「成人した人の両親が亡くなっても、孤児とは言いませんよ」

「じゃあ僕はこれからどうやって生活したらいいんだよ」

「働けばいいじゃないですか」

「中学の時にいじめられて、それから二〇年以上ずっと引きこもってたんだよ。そんな僕が働ける訳ないだろ」

「あなた、その歳までずっと親に食べさせてもらっていたんですか。呆れた。これを機会に、ちゃんと自立してくださいね」

「そんなー」