爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)採用作【K子】
今年も就活のシーズンがやってきた。送られてきたたくさんの履歴書を見ながら、私達は書類審査をしている。
「有望そうな学生が結構いるな」
「一流大学からの応募が多いですね」
「とりあえず、一流大学の学生は全員通しておくか」
「そうですね。履歴書の内容も問題なさそうですし……あれ？ この子の名前、おかしいですよ」
「どれどれ。鈴木Ｋ子って、名前の頭文字をイニシャルのＫにして書いてくるなんて、何を考えているんだ？」「本名を知られたくないとかですかね？」
「履歴書に本名を書かないなんて、非常識にも程があるぞ。こいつだけははずしておこう」
「その方が良さそうですね」
「Ｋ子、ご飯よ」
「はーい」
「この家も寂しくなったわね」
「ほんとね。お父さんは亡くなっちゃったし、お兄ちゃんお姉ちゃん達も、みんな自立して、この家を出て行っちゃったもんね」
「ところでＫ子、就活はうまくいってるの？」
「それが全然ダメなの。書類審査すら通らないことが多くて」
「そうなの。お兄ちゃんお姉ちゃん達の時も苦労してたみたいだからねえ」
「でも、Ａ助（えーすけ）兄ちゃんも、Ｂ奈須（びーなす）姉ちゃんも、高Ｃ（たかしー）兄ちゃんも、樹Ｄ（じゅでぃー）兄ちゃんも、Ｅ代（いーよ）姉ちゃんも、Ｆ美（えふみ）姉ちゃんも、王Ｇ（おうじー）兄ちゃんも、Ｈ郎（えいちろう）兄ちゃんも、Ｉ瑠（あいる）姉ちゃんも、Ｊ難（じぇいむず）兄ちゃんも、みんな就職できたんだから、私も頑張んなきゃね」