爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)没作【器用貧乏】

 私の家は貧乏だった。

「うちが貧乏なのは国のせいだ」

 私の両親は口癖のように、何度もそう繰り返していた。

「私、大きくなったら総理大臣になる。そしたら、みんなが裕福に暮らせるもっと素敵な国にしてみせるわ」

 私はいつしかそんな夢を持つようになった。私の家は本当に貧乏で、食べていくのがやっとの生活だった。当然、欲しかったおもちゃやオシャレな服なんて親は買ってくれない。そんな私にとって、お正月やお盆は貴重なイベントだった。集まってくる親戚達にうまく媚びて、一円でも多くのお小遣いをもらうと努力する内に、私は自然と器用に立ち回る術を身に付けていた。 

 その器用さは学業にも生かされた。先生にうまく取入って成績を上げてもらい、優秀な学生にしか適用されない給付型の奨学金制度を利用することに成功。貧乏でありながら、一流の大学に進学することができた。 

 その後も私は、貧乏によって身に付けたその器用さを存分に生かしながら人生を歩み続けた。 

 四十歳になった私は、女性初、さらには史上最年少の総理大臣となった。私が総理大臣になれたのも、ひとえに家庭が貧乏だったおかげだ。貧乏だったからこそ、人生を器用に生き抜く術を身に付けることができたのだ。

 これから私は総理大臣として、この国をもっと貧乏な国にしていこうと思う。そうすればきっと、私のような器用な人間に溢れた素晴らしい国になることだろう。