爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:宇宙ステーション)没作【自殺願望】

 彼は天才だった。勉強でもスポーツでも、簡単にトップの成績をおさめてしまう。そのせいか、彼はいつも人生に退屈していた。彼に匹敵するライバルでもいれば、退屈せずにすむのだが、そんな人はいつまでも現れなかった。 いつしか彼は、自殺願望を抱くようになった。こんな退屈な人生、さっさと終わらせたかったのだ。 

 そんな時、彼はたまたま宇宙飛行士募集のチラシを見つけた。宇宙に行けば、何か生き甲斐を見つけらるかもしれない。彼は宇宙飛行士に応募し、当然のように合格。宇宙ステーションでの勤務が決まった。 

 しかし、宇宙に行っても、彼の退屈は変わらなかった。毎日過ごす宇宙ステーションでの生活は、それはもう退屈で、彼はついに、ここで自殺することを決意した。

 たまたまそばに丁度良い長さのロープを見つけた彼は、これで首を吊ることにした。その時、たまたま同僚がそこを通りかかった。 

「おい、お前何やってんだ?」 

「あまりに退屈だから、首を吊って死のうと思ってね。おっと、止めないでくれよ。凡人の君にはわからないだろうね。天才であるが故の僕の苦しみは」 

「あのーどうでもいいけどさ、無重力の宇宙じゃ首吊ったって死ねないぞ」 

 馬鹿と天才は、紙一重だ。