爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:謝罪)没作【一升瓶】

「鈴木教授、レポートの提出が遅れてしまって本当に申し訳ありませんでした。一日遅れですが、ちゃんとレポート書いてきました。なのでどうか、単位をいただけないでしょうか?」 

 僕は教授に何度も土下座して謝ったが、結局教授は単位をくれなかった。このままでは単位が足りずに留年してしまう。 

「おい、どうしたんだ? そんな落ち込んだ顔して」 

「あっ、先輩。実は僕、鈴木教授の講義の単位、落としそうなんです。何度も土下座して頼んだんですけど、結局ダメで。このままでは留年しそうなんです」 

「お前な、いくら土下座したって無駄だよ。こういう時はな、これを使えばいいんだ」 

 そう言うと先輩は、僕にお酒の入った一升瓶をくれた。 

「なるほど。その手があったか。先輩、ありがとうございます。あとでもっと高いお酒買ってお礼しますんで。それじゃあ今から行ってきます」 

「おう、頑張れよ」

 そらから数十分後。

「先輩、さっきはありがとうございました。これ、お礼のお酒です」 

「おう。それで、うまくいったか?」 

「はい。結構簡単に殴り殺せましたよ」 

「え? 今お前、何て言った?」 

「だから、ちゃんと殴り殺せましたよ」 

「お前、あの一升瓶で鈴木教授を殴リ殺したのか?」 

「ええ。先輩のアドバイス通りに」 

「ちげえよ。俺は鈴木教授にお酒をプレゼントして、それで単位をもらえって意味であれを渡したんだよ」

「なんだそうだったんですか。てっきりあれで殴り殺しあとにこっそりデータを改ざんしろって意味だと思いましたよ。これは完全に先輩が悪いですね。あれじゃあ誰だって勘違いしますよ」 

「しねーよ。て言うかお前どうすんだよ。このままだと捕まっちまうぞ」 

「大丈夫です。僕、手袋してましたから。現場の一升瓶についているのは、先輩の指紋だけです」 

「てめえふざけんなよ。このままだと俺が殺したことになっちまうだろうが」 

「元はと言えば先輩のせいなんですから、自業自得ですよ。それじゃあ、僕はこれで失礼します」 

「おい! ちょっと待てよ!」  

 良かったー。これで留年しなくてすみそうだ。先輩、ごめんね。