爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:トンネル)没作【引退試合】

 野球選手の私は、通算本塁打四九九本という記録を持っていた。

 今日の引退試合でホームランを打てば、丁度切り良く五〇〇本になるため、私は張り切って引退試合に臨んでいた。

 しかし、私は一打席目から三打席目までホームランを打てず、九回表の攻撃ではあと一人で私の打席が回ってくるという所で終わってしまい、試合は二対一とうちのチームがリードした状態で九回裏を向かえた。

 うちの抑えピッチャーの佐々木は、あっという間に打者二人を三振に打ち取った。

 ところが、最後の打者に対する初球で、佐々木は信じられないような投球をした。なんと、ストライクゾーンのど真ん中に山なりのスローボールを投げたのだ。

 突然の絶好球に力が入ったのか、その打者は打ち損じてしまい、三塁線にゴロを打ってしまった。佐々木の奴、ずいぶんと相手をなめた投球をするな。まあいいか。これでゲームセットだ。そう思った瞬間、三塁を守っていた名手鈴木が、なんとそのゴロをトンネルして後ろにそらしてしまったのだ。あいつがあんなエラーをするなんて珍しいな。打者はそのまま二塁まで進んだ。

 そのあと佐々木は、さらに信じられないような投球をする。なんと、この大事な場面で2回続けてボークをやらかしたのだ。これで試合は、二対二の振り出しに戻ってしまった。すると佐々木は、なぜか笑顔で一塁を守っていた私の方へとやってきた。

「先輩、これで次の回でまた打席が回ってきますね。絶対ホームラン打ってくださいよ。僕達みんな、先輩の五〇〇号ホームランを見たいんです」

「佐々木、お前それであんな投球を。鈴木のあのトンネルもわざとだったのか。お前ら、私のためにここまで……わかった。お前らのためにも、絶対に五〇〇号ホームラン打ってやるからな」

 この後、佐々木は次のバッターにサヨナラホームランを打たれた。