爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)没作【双子の娘】
何て悲劇だ。娘二人が交通事故で亡くなっただなんて。妻を亡くして以来、双子の娘達だけが私の生きがいだった。それなのに……。落ち付け。今はまず、娘達がいる病院へ向かおう。
病院に到着すると、看護師が出迎えてくれた。
「真紀さんと美紀さんのお父様ですか?」
「はい」
「こちらの霊安室です。どうぞ」
そこには、娘二人の変わり果てた姿があった。
「あのーお父様。こんな時に申し訳ないのですが、どちらが真紀さんで、どちらが美紀さんか教えていただけないでしょうか? 私には見分けがつかなくて、困っていたんです」
私は二人の顔にかけられた白い布をはずし、口元にあるほくろを確認しようとした。このほくろがある方が姉の真紀なのだ。しかし、確認はできなかった。二人の顔の皮膚が下半分だけはがれ落ち、真っ赤に染まっていたためだ。
「お父様。せかすようで申し訳ないのですが、早く教えていただきませんか。私も忙しいので……」
やばい、やばいぞ。どっちがどっちだか全く判別できない。一八年も一緒に暮らしてきたというのに、情けない。でも、今さらわからないなんて言えないぞ。仕方がない。こうなったら一か八かだ。
「左が真紀で、右が美紀です」
その答えが合っていたのかどうか、今でも謎のままである。
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