爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)没作【不時着】

 ひどい故障だ。安物のロケットは、これだから信用できない。まだ出発したばかりだというのに。仕方がない。近くの星に不時着するか。SOSの無線を飛ばしておけば、いずれ救助がくるだろう。 

 ダメだ。操縦がきかない。このスピードのまま海に突っ込んでしまったら、救助がくる前に即死だぞ。神様、どうか命だけはお助けください。  

 ふー。なんとか助かったみたいだな。だがロケットは粉々だし、足も一本失ってしまった。このままでは、いずれ死んでしまう。こんなことになるんだったら、ケチらないで最新式のロケットを買うんだったな。

 んっ? 空に小さな光が見える。あの光はまさか、もう助けにきてくれたのか。おーい、ここだここだ。

「大丈夫か」

「ご覧の有様さ。足も一本やられてしまったよ」

「それは大変だったな。こっちのロケットに医者も乗ってるから、急いで手術しよう」

「ありがとう。恩に着るぜ」   

 

 親子三人が仲良く海岸を歩いていると、子供が何かを見つけたようだ。

「パパ、ママ、何だろうこれ?」

「これはイカの足だな。それにしても、ずいぶんとでかいな」

「丁度良かったわ。昨日大根が安かったから、いっぱい買っておいたのよ。今夜はゲソと大根の煮物で決まりね」 

 この足の正体が火星人の足だということを、この家族はまだ知らない。