爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:トンネル)採用作【出口の見えないトンネル】

 大学合格祝いに親に買ってもらったカーナビ付きの車を走らせて、僕は大学に向かっていた。

「これからトンネルに入ります。このトンネルを抜けますと、目的地に到着します」

 一限目の経済学の講義まで、あと十分しかない。僕はアクセルを強く踏み、スピードを上げた。

「トンネルの出口まで、あと300メートルです」

 よし、何とか間に合いそうだ。これであの怖い教授に怒られずにすみそうだ。

「トンネルの出口まで、あと500メートルです」

 あれ? さっき300メートルって言ってたよな。なんで距離が延びてるんだ?

「トンネルの出口まで、あと700メートルです」

 まただ。このカーナビ壊れてるのかな? それにしても、全然トンネルの出口が見えてこないぞ。おかしいな。

「トンネルの出口まで、あと900メートルです」

 一体何なんだよ。これじゃあ一生トンネルの外に出られねえじゃねえか。ちくしょー!

「おい君! 起きなさい。今は経済学の講義中だぞ」

「すっ、すみません教授」

 どうやら、さっきのは夢だったようだ。良かった―。冷静に考えたら、出口のないトンネルなんてある訳ないよな。

「それでは講義の続きを始めます。このように日本の借金は年々増え続けており、返済の見通しは全く立っていません。まるで、出口の見えないトンネルのようですね」