爆笑問題カーボーイショートショートショート(テーマ:家族)没作【便利屋】
便利屋を開業して、もうすぐ一年が経つ。社員は私一人だけの、小さな便利屋だ。
高齢者の家の模様替えを手伝ったり、人気商品の行列で依頼者の代わりに並んだり、急に人手が足りなくなったお店で一時的に働いたりなど、仕事内容は多種多様だ。
最初の頃は、依頼の電話が一回も鳴らない日がざらにあったが、最近では常連さんも増え、なんとか軌道に乗ってきた。
そんなある日、大きな仕事の依頼が舞い込んできた。それは、裕福な家族からの依頼だった。
その家族は一ヶ月ほどヨーロッパ旅行へ出掛けるらしく、その間、家の留守番を頼みたいとの依頼だった。 さすがお金持ちの家だけあって、金払いも良い。チップも含めて、通常価格の二倍の報酬を支払うと言ってくれている。私はもちろん、二つ返事で依頼を引き受けた。
だが後になって、少し不安になってきた。一ヶ月もの間留守番をするとなると、その間は他のお客さんの依頼を断らなくてはならない。この仕事で一番大事なのは、常連さんとの信頼関係だ。もしかしたら、この一ヶ月の間に常連さんの信頼を失ってしまうかもしれない。そう考えると、この依頼を引き受けたのはまずかったのかも。
私は悩んだ末に、ある名案が浮かんだ。
「もしもし、そちら便利屋さんですか? 実は一ヶ月間、うちの便利屋で働いていただきたいのですが……」
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