千春ちゃん(阿刀田高のTO-BE小説工房課題【Reトリック】没作)
今度の土曜日、千春ちゃんと映画デートでもしようかな。俺は早速メールを送った。
『お疲れ。今何してた?』
『お疲れ。今レポートやってた。お前はもう終わったのか?』
『千春ちゃんお疲れ。今度の土曜日なんだけど映画見に行かない?』
『光君お疲れ。映画いいね。行こう行こう。何の映画にする?』
『俺はもうとっくに終わったよ』
『マジか。頼む、そのレポート見せてくれないかな?』
『そうだなー、恐竜公園とかおもしろそうじゃない? あと、星の戦争も気になってる。千春ちゃんは何か見たい映画ある?』
『最近星の戦争のCMよく見るよね。、私もちょっと気になってたんだ。星の戦争にしようよ』
『いいよ。このメールにレポートの画像添付しとくから。その代わり、今度ラーメンおごれよ』
『ありがとう。助かったわ。ラーメンくらい何でもおごってやるよ』
『よし、じゃあ星の戦争に決定ってことでいいね』
『うん。あと映画終わったらランチ食べに行こうよ』
『それなら最高級のフカヒレラーメンでもごちそうしてもらおうかな』
『フカヒレラーメン? それいくらするんだよ』
『どこか行きたい店でもあるの?』
『うん。映画館の近くに最近できたピザ屋さんがあるんだけどね、そこがすごいおいしいって評判なの』
『1万円』
『まじかよ。さすがにそれはきついなー。頼む、勘弁してください(泣)』
『ピザ屋さんなんてできてたんだ。初めて聞いた。行ってみようか』
『でも、この前友達と行ったカフェにあったオムライスもおいしそうだったんだよなー。その時は悩んだ末にパスタにしたんだけど、やっぱりオムライスも食べたかったな―。そのカフェも映画館から近いからさ、やっぱりそこのオムライス食べに行こうよ』
『ごめんごめん冗談だよ。いつもの麺吉のラーメンでいいからさ』
『良かった―。めっちゃ焦ったわ。じゃあまた今度な』
『ならオムライスでいいよ。それじゃあ土曜日楽しみにしてるね。おやすみなさい』
『ちょっと待って光君。やっぱりピザも捨てがたいな―。どうしよう?』
『そうだ千春。前から聞きたかったんだけど、お前確か塩ラーメンが好きだったよな。どうして塩が好きなんだ?』
『出た! 光の急な質問。お前よく突然こういうどうでもいいような質問してくるよな。塩が好きな理由なんて聞かれても、好きだからとしか言えねえよ』
『今決めても土曜日になったら気分変わってるかもしれないよ。どっちにするかは映画見終わった後に決めたらいんじゃない?』
『光君頭いい! 確かにそうだよね。当日決めることにします』
『質問に答えてくれてありがとう。それじゃあまた今度な』
『ああ、じゃあな』
『千春ちゃんがバカなんだよ(笑) それじゃあもう1回。土曜日楽しみにしてるね。おやすみなさい』
『もー光君ひどい(笑) 私も楽しみにしてるね。おやすみなさい』
このメールのやりとりにもずいぶん慣れたな。それにしても、メールを返信した瞬間に男の別人格と入れ変わっちゃうなんて、ほんと変わった子だよな。まあそんな子を好きになっちゃう俺も、十分変わり者か。
あれ、千春ちゃんから電話だ。いや違う。最後に返信したのが千春ちゃんだから、今は千春か。レポートの画像で見づらい所でもあったかな。
「もしもし」
「こんばんは光ちゃん。今度の日曜日なんだけど、遊園地にでも行かない?」
「うれしー。誘ってくれてありがとう。行きましょ行きましょ」
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