安達弾~打率2割の1番バッター~ 第23章 春季大会の結末①

2021年9月2日

 西暦2017年。4月30日。春季大会の準々決勝が行われた。対戦カードは、船町北高校に逆転勝ちし今1番勢いに乗っている千葉修道高校VS絶対王者の龍谷千葉高校。千葉修道は昨日に引き続きエースの中原を先発のマウンドに上げる一方で、龍谷千葉はエースの村沢ではなく3年生の山田を登板させた。

「ノリに乗っているうちに対してエースを温存とは舐めた真似を。お前ら、さっさと打ち崩して龍谷千葉のエースを引きずり出してやろうぜ!」

「はい!」

 そう気合を入れて試合に臨んだ千葉修道だったが、結局最後まで山田の投球に苦戦し、9回を終えて4点しか奪うことができなかった。一方の龍谷千葉打線は、打線が二巡目に回った3回の途中からソロホームランで1点を返すと、4回5回と3点ずつ追加点を加えてエース中原をノックアウト。終わってみれば13対4という大差で危なげなく勝利した。

      123456789 計
 龍谷千葉 001331203 13
 千葉修道 000201001 4

 そして3日後の準決勝もコールド勝ちすると、その翌日に迎えた決勝戦では順当に勝ち上がってきた三街道高校との対決となった。が、ここで三街道はここまでの全試合を先発で投げてきた細田兄や、中継ぎで登板していた細田弟ではなく、今大会で初登板となる無名のピッチャーを登板させてきた。

「もしかしたら細田兄弟以上の隠れた逸材かもしれん。できるだけ球数を投げさせて様子を見ていくぞ」

「はい!」

 そう警戒を強めた龍谷千葉だったが、三街道の先発ピッチャーは細田兄弟に比べると明らかに実力的に劣っていたこともあり、龍谷千葉は難なく攻略した。

      123456789 
 龍谷千葉 1122
 三街道  000

 このまま一方的な試合展開で終わるかと思われたこの試合だったが、二巡目のクリーンナップに打線が回ってきた4回表から、三街道が反撃を始めた。

「カキーン!!」

「カキーン!!」

「カキーン!!」

 先発の村沢が投げる癖球に対して、球が変化するギリギリまで引き付けてからのシャープなスイングでコツコツと単打を積み重ねていき、この回一挙5得点を挙げてエース村沢をマウンドから引きずり降ろすことに成功した。

      123456789 
 龍谷千葉 1122
 三街道  0005