安達弾~打率2割の1番バッター~ 第9章 練習試合1試合目 船町北VS大阪西蔭④

(あの龍谷千葉相手に1点差やったっちゅうからどんなもんかと思て呼んでみた訳やけど、思っていた以上に大したことなさそうやな)

 1回の攻防を終えての戸次監督の素直な感想だった。

 2回裏。4番バッター安達の打席が回ってきた。安達は春季大会以降の練習試合9試合でもホームラン12本、打率は5割越えと相変わらず打ちまくっていた。しかし、まだ公式戦では春季大会に3試合出ただけということもあり、まだまだ安達は無名の選手だった。

(これがおたくの4番バッターかいな。1年が4番て、よっぽど人材不足なんやなあ可哀そうに。百瀬の球にちょっとでも当てれればええけど。頑張りやー)

 安達に対する初球は、内角の低めへのカットボール。見逃しストライク。

(これがカットボールか。えーと、ピッチングマシンのスライダー弱と中の間くらいで若干斜めに落ちていく感じかな)

 2球目、今度は外角高めへのカットボール。安達は振りにいくも空振りしてしまう。

(変化するタイミングがギリギリだから見極めるのが難しいな)

 3球目、外角へストレート。安達は打ちにいきそうになるもギリギリのところでバットを止めた。外に外れてボール。

(もしも今のがカットボールだったらギリギリストライクゾーンに入ってたな。危ねー)

 4球目、百瀬は左バッターの安達の内角ギリギリを抉るカットボールを投じた。

「カーン!!!」

 安達の打球音は明らかに詰まらされたのがわかるものだった。

(おー当てた当てた。やるやんかあの1年。おめでとさん。まあ内野フライやけどな)

 しかし戸次監督の予測に反して安達の打球はなかなか落ちてこないままセンター方向へと伸びていき、やっと落ちてきた頃にはセンターの定位置まで届いていた。

(完全に詰まらされながらあそこまで飛ばしおった。あの1年、只者やないで。要チェックやな)

 その後、5番バッターの黒山、6番バッターの福山と百瀬のカットボールに手も足も出ないまま連続三振に打ち取られた。

 2回の表。1番バッターの三浦に対して白田が投じた初球はど真ん中に向かっていった。

(すっぽ抜けか? ラッキー!)

 三浦がバットを振り始めた瞬間、球は突然落ち始めた。

「カーン!!」

 地面に打ちつける形になった打球はピッチャーゴロとなった。

(前の打席のフォークと全然ちゃうやんけ。この短い間に何があったんや?)

 1回表に取られた4失点と引き換えに、白田は新しいフォークボールをほぼ完全に自分のものにしていた。

(落ち始めるのが遅くなった分変化量は前よりも落ちたが、それもいい具合にゴロを量産しやすくなってプラスに働いている。このフォーク、かなり使えるぞ)

 白田以上にこのフォークボールを気に入った鶴田は、2番バッターの田所に対してフォーク中心の配球で攻めると、またもやピッチャーゴロに打ち取った。

(問題は次だ。3番の山本は前の打席、白田のたまたまうまくいった新型フォークボールでほぼ打ち取られた形だったからな。相当警戒してくるはずだ。ここは裏をかいて……)

 3番バッターの山本に対して、今度はフォークボールを使わずにストレート中心の配球で攻めた結果、頭に前の打席のフォークボールの残像がちらついた三浦は中途半端なスイングをしてしまった。

「カーン!!」

 結果はまたまたピッチャーゴロ。大阪西蔭の上位打線から始まるこの回を、3人連続ピッチャーゴロという最高の形で終わらせた白田に、戸次監督も驚きを隠せなかった。

(この白田とかいうピッチャー、試合の中で進化しとる。初回の大量得点にみたいなことはもう期待できへんやろなあ)

 3回の表。船町北の下位打線、7番新垣、8番尾崎、9番鶴田の3人は全く見せ場もないまま三振に倒れた。これで船町北打線は安達以外のメンバー全員が百瀬から三振を食らったことになる。

(このチーム、打線はあの1年以外カスやな。まあ1人だけでもうちの投手のまともな練習相手になりそうなバッターがおって良かったわ)