安達弾~打率2割の1番バッター~ 第7章 春季大会準々決勝 船町北VS龍谷千葉⑭

「アウト!」

(えっ?)

(嘘だろ?)

(マジで?)

 球審のアウトコールに、2塁と3塁まで進塁していたランナーの斎藤と田中、ショートを守っていた尾崎は一瞬耳を疑った。しかし、本塁でアウトになったランナーを見て、3人は理解した。

             あいつ

(サードランナーが足の遅い総次郎だったこと、すっかり忘れてた)

             清村弟

 時を同じくして森崎監督は、一瞬でも白田のことを疑った自分を責めていた。

(悪い白田! 俺は監督失格だ)

 3塁ランナーの走力を加味した好判断と好返球によりチームの危機を救った白田は、チームメイト達や観客達から賞賛されてうれしいやら、ライバル黒山のエースの座を守るアシストをしてしまったことへの若干の後悔やらで複雑な思いを抱えていた。

 白田のファインプレーにより、1点差という十分逆転のチャンスを残したまま、チームのムードも最高の形で9回表の攻撃に入った船町北ナインだったが、6番バッター福山ショートゴロ、7番バッター新垣セカンドゴロ、8番バッター尾崎キャッチャーフライと最後まで村沢の癖球をまともに捉えることができないまま試合は終了。千葉県の絶対的な王者、龍谷千葉高校野球部を最後の最後まで追い詰めたもののあと一歩届かず、船町北高校野球部の春季大会はベスト8という結果で幕を閉じた。

 船町北 5-6 龍谷千葉

 試合が終われば勝利チームと敗北チームが生まれる。勝利チームは明るいムードに包まれ、敗北したチームは暗い空気に包まれる。そんな場合がほとんどだが、今回の場合はそれが真逆だった。まずは敗北した船町北高校野球部のミーティングから。

「龍谷相手によくここまで戦った。去年の夏にコールド負けした相手に1年足らずでこんな接戦ができるまでになったとは感慨深い。今まで5年間、千葉の高校野球界は完全に龍谷1強時代が続いていた。だがその時代は今日の試合で終わりを告げた。そしてたった今、千葉の高校野球界は完全に龍谷とうちの2強時代に突入した。いや、うちと接戦だった三街道を入れると3強時代だな。とにかく、うちの野球部が確実に甲子園出場を狙えるレベルまできていることは確かだ。だが、油断は禁物だぞ。今日の試合の結果を受けて、龍谷は徹底的にうちを研究してくるはずだ。龍谷だけじゃない。三街道や昨日試合した千葉修道もリベンジに燃えているはずだし、県内全てのチームから今まで以上にマークされることになる。みんなには今日の試合や今大会で浮き彫りになったそれぞれの課題を夏までに克服して、さらなるレベルアップに努めてほしい」

「はい!」

 そしてお次は龍谷千葉高校野球部のミーティング。

「おいテメエら! なんて恥ずかしい試合晒してくれとんじゃ! 超攻撃型野球のうちがたったの6点て、不甲斐なさ過ぎて涙が出てくるわ! テメエら全員、学校に戻ったら寮の晩飯の時間までずっと素振りしてろ!」

「はい!」