安達弾~打率2割の1番バッター~ 第30章 もうすぐ夏の甲子園開幕④

「へーこんな番組やってたのか。俺も見たい」

「どうしたどうした? おっ、これは面白そうな動画だな。俺も見る」

「お前らコソコソ何やってんだよ」

「俺らも混ぜろよ」

「腕金の特集番組か」

「せっかくだし、研究も兼ねてみんなで見ようぜ」

 こうして、西郷が昨夜たまたま見つけた秋田腕金高校の特集番組の動画を、スマホからテレビに繋げてみんなで見る流れになった。

「それにしてもこの動画、凄い人気だな。2日前にアップロードされたばっかりだってのに、もう120万回再生かよ」

「まあ今の古田輝希人気からすれば、当然の結果か」

「そういえば、安達が監督にスカウトされるきっかけになったあのバッティングセンターの動画って、今どれくらい再生されてるんだ?」

「えーと……112万回再生です」

「2年近くも前にアップされた動画なのに、たったの2日で抜かれるとはな。まっ、元気出せよ」

「べっ、別にショックなんて受けてませんよ」

 そう言いながらも、ちょっとだけ悔しそうな表情を浮かべる安達。

「まあしょうがねえよ。確かに安達のバッティングの凄さは俺達も認めるところだけど、古田の場合は野球ファンじゃなくても見たくなるようなインパクトがあるからな」

「おまけにあのイケメンときたもんだ。今年の高校球児イケメンランキングでは、2位と3位の万場兄弟に大差を付けて1位だったしな」

「ていうかさ、万場兄弟は大してイケメンじゃないよな」

「俺も思ってた」

「まあこういうランキングは、純粋な顔の良さプラス野球の実績も関わってくるからな。その点、万場兄弟は去年の夏に鮮烈デビューして以来、ずっと負けなしで圧倒的な実績を残してるから、どうしても上位に入りやすくなるんだよ」

 古田輝希からイケメンランキングへと話題が移りかけていたその時、西郷がスマホからテレビに繋げる作業を終えて、テレビ画面に動画が流れ出した。

「あのーさっきからめっちゃ気になってたんですけど、この特集番組のタイトルにある、二刀流ってどういう意味ですか?」

「まあ見ればわかるよ」

 こうして、まだ抽選会場にいる鈴井監督と星キャプテンを除いた船町北高校野球部のみんなで、初戦で当たることになった秋田腕金高校野球部の特集番組鑑賞会が始まった。