安達弾~打率2割の1番バッター~ 第30章 もうすぐ夏の甲子園開幕⑮

 秋田腕金高校の特集番組を見終わった船町北高校野球部員達は、口々に感想をこぼした。

「腕金高校っていうよりも、もはや古田輝希の特集番組みたいだったな」

「ノーヒットノーランからの完全試合、しかも左右両方で投げられる二刀流だもんな。まっ、こういう番組編成になるもの致し方ないか」

「どこから目線のコメントだよ」

「にしても、情報としては前から知ってはいたけれど、こうして改めて見るとやっぱり古田耀希はスーパースターだな」

「おまけにイケメンで爽やかだし」

「完全に野球アニメの主人公そのものだよ」

「こんな番組作られたら、ますます古田の人気が爆発しそうだな」

「きっと5日後の甲子園初戦の船町北対腕金を見に来る客は、9割方古田目当てだろうな」

「対戦相手の俺達にとっては、完全なアウェー状態が出来上がるって訳だ。あーやりずれー」

「しかも人気だけじゃなくて実力も兼ね揃えてやがるからこりゃまた厄介だ。あーくそ! 星の奴め、よくもこんな最悪のくじを引きやがったな」

「本当にすまなかった」

「えっ!」

「キャプテン!」

「それに監督も」

「いつからいたんですか?」

「ついさっきだよ。ていうかお前ら、自主的に対戦相手の研究をしていると思って感心していたのに、それで弱気になっているようじゃいかんぞ。それに、星だって好きでこのくじを引いた訳じゃないんだから責めるのは良くないぞ」

(おいおい監督、さっきまで散々俺に怒ってた癖に、よく言うぜ)

「でも監督、あの古田相手にどう戦えばいいんですか?」

「それは……まだわからん。だがな、俺達の初戦が始まるまでまだ5日もある。それまでにしっかり研究していくぞ。幸いなことに、相手は超人気者だ。だからさっきお前らが見てたような特集番組や、観客が撮った試合映像なんかがネットには山のように転がっている。研究のしやすさという1点においては、うちの方が圧倒的に有利だぞ」

「確かにそうっすね」

「ようし、古田の投球を研究しまくってみんなで丸裸にしてやろうぜ」

「おう!」