安達弾~打率2割の1番バッター~ 第30章 もうすぐ夏の甲子園開幕⑭

 抽選会を終えて戻ってきた星を、鈴井監督は怒りの表情で待ち構えていた。

「おい星、よくもやってくれたな」

「すみませんでした!」

「あれだけ当たらないようにと念を押していた大阪西蔭と3回戦で当たってしまうようなくじを引いただけでも懲罰ものだが、それは100歩譲って許そう。なぜよりによって初戦から腕金高校なんだ! お前言ったよな? 三街道との決勝戦で活躍できなかった悔しさを、この抽選会で晴らしてやるって。俺の聞き間違いか?」

「いや、聞き間違いではないです」

「だいたいこんな抽選結果になったのは、お前の日頃の行いのせいじゃないのか? 掃除はちゃんとしてるか? ゴミが落ちていたらちゃんと拾っているか? 道具はちゃんと大事にしているか? そういう日頃の行いがこういう時に出るんだよ。もっとキャプテンとしての自覚をもって、日頃から模範となるような行動してもらわんと困るぞ」

「本当にすみませんでした!」

「もしも初戦で負けでもしたら、特待生……」

(やばいやばい、怒りに任せて特待生枠の話をしてしまうところだった。これは内緒にしておかんとな)

「特待生がどうかしましたか?」

「いや、何でもない。まあ決まってしまったものは仕方がないな。これから古田をどうやって打ち崩すか、じっくり対策を考えていくとしよう」