安達弾~打率2割の1番バッター~ 第28章 夏の甲子園千葉大会決勝 船町北VS三街道⑥
「解説の小田さん、いよいよ安達君に打席が回ってきましたね」
「私が監督なら、例え初回からでも敬遠させるかもしれません。それくらい怖いバッターですよ安達君は」
「安達君と言えば、去年の大会ではホームラン10本という驚異的な記録を残しましたからね。しかし、今大会ではまだ4本と、去年ほどの怖さは感じないようにも思えるのですが……」
「馬鹿を言いなさい。今年の安達君は去年の大会とは比べ物にならないほど警戒されて、まともに勝負してもらえる機会が圧倒的に少ないんです。そんな中でこの数字ですから十分驚異的ですよ」
「それは失礼致しました」
「その上、足も速くて敬遠しても盗塁を確実に決めてきますからね。イメージとしては、龍谷千葉の清村兄弟の兄総一君の走力、そして弟総次郎君のパワーとそれぞれの長所を合体させたような感じでしょうか」
「それはとんでもないバッターですね」
「ストライク!」
「安達君への初球は真ん中低めへのストレート。1ストライク。小田さん、勝負してきましたね」
「まあ勝負を避けても、盗塁で得点圏まで走られてしまいますからね。悪くない選択だと思いますよ。ただし、やっぱり私が監督だったら敬遠するけどなあ」
「ボール!」
「安達君への2球目は、内角へのチェンジアップが低めに外れました」
「ずばり予言するよ。この打席、安達君はホームランを打つね」
「出ました! 小田さんの予言。小田さんは今まで解説中に様々な予言をしてきて、怖いぐらいに的中させてきた実績があります。果たして小田さんの予言、今回も当たるのでしょうか?」
「ストライク!」
「内角へのストレートが低めいっぱいに決まりました。これで1ボール2ストライク。安達君追い込まれましたが、果たしてここから小田さんの予言通りホームランを打てるのでしょうか?」
「絶対に打つよ。安達君なら」
「さあ雄二君、振りかぶって4球目を……投げました!」
「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」
安達がホームランを打つとドヤ顔で予言していたベテラン解説者の小田さんだったが、あっさりと外れてしまい、解説席では気まずい空気が流れていた。
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船町北 0
三街道
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