安達弾~打率2割の1番バッター~ 第28章 夏の甲子園千葉大会決勝 船町北VS三街道⑤
「船町北高校の先頭バッターはキャプテンの星君ですが、どういった選手でしょうか?」
「先ほども話した通り、船町北高校は盗塁が非常に多く選手全員足が速いのですが、中でもこの星君のスピードは群を抜いていますね。センターの守備でも、その足の速さが生かされています」
「ストライク!」
「初球は内角へのスライダーから入ってきました。バッター見逃して1ストライクです」
「星君の足があれば、例えボテボテの当たりでもヒットが期待できるので、何とかバットに当てて前に飛ばしてほしいですね」
この時星は、そんな解説をされるまでもなく何とかしてバットに当てようと考えていた。
(左対左でスライダーを内角に投げ込まれたら、やっぱり打ちづらいな。ヒットどころかバントでも当てるのがやっとだぞ。外角球に狙いを絞って打ちにいくか)
細田弟の2球目は、内角高めへのストレート。星はこの球も見逃す。
「ストライク!」
(速っ! 細田兄に比べたら弟のストレートの方が遅いはずだけど、それでも十分脅威だな。そして、早くも追い込まれちまったか。3バント覚悟でセーフティーバントを狙いにいくか? でも守備位置的に決まらなそうなんだよな。近すぎず遠すぎず、絶妙な守備位置だ。やっぱり外角球に狙いを絞っていくか)
そして3球目。細田弟が投げた球は、星が待ち望んでいた外角への球だった。
(これなら何とか)
そう思って打ちにいった星だったが、球がホームベース上まで到達するはるか前に、星のバットが先にホームベース上を通過していった。そして少し間をおいてから、細田弟が投げた球がゆっくりとホームベース上を通過していく。
「ストライク! バッターアウト!」
「三球三振! 細田兄弟の弟雄二君。先頭打者の星君を完璧に抑え込みました」
「最後のチェンジアップ、星君は全くタイミングが合っていませんでしたね」
「おっとここで、ピッチャー細田雄二君に代わりまして、ファーストを守っていた細田雄一君がマウンドに上がります」
「やはり今日もこの戦術でいくみたいですね」
その後、細田弟に代わって登板した細田兄の投げるストレートとカーブに触れることすらできないまま、2番バッターの野口も三球三振で抑えられてしまった。そして3番バッターの安達が打席に上がると、またすぐに細田兄から細田弟への交代が始まった。
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