安達弾~打率2割の1番バッター~ 第28章 夏の甲子園千葉大会決勝 船町北VS三街道⑲
川合のコントロールの悪さを目の当たりにしたバッター達は、そのほとんどがフォアボールを狙いにいこうとする。そのため、相手は2ストライクに追い込まれるまでは中々バットを振ってこない。つまり川合は、2ストライクというピッチャー有利のカウントになるまでは、打たれるリスクがほぼ0のまま投球ができる。そして2ストライクまで追い込まれたバッターは、ここから1球でも空振りしてしまったら終わりという圧倒的不利な状況での対戦を強いられてしまうのだ。
もちろん、中にはフォアボール狙いなんてせずに甘いコースにきたら初球からでも積極的に打ちにいくというバッターもいる。だが、下手に積極的に打ちにいってゴロやフライでも打ってしまったら、振らなくてもフォアボールが見込める相手にいきなり打ちにいって凡退に終わる身勝手な馬鹿というレッテルを張られてしまい、一気に監督やチームメイトからの評価を落としてしまうリスクがあるため、そんな愚かなことをするバッターはごくごく少数だ。
もしもこの試合、三街道打線がフォアボール狙いをせず最初からヒットを打つつもりで川合と対戦していたら、三街道打線の高いバッティング技術をもってすれば早い段階で打ち崩すことも可能だったかもしれない。しかし、なまじ高い確率でフォアボールで出塁できるものだから、選手達はどうしてもフォアボール狙いに徹するようになる。
そして狙い通りフォアボールで出塁できればいいが、2ストライクまで追い込まれてしまうとさあ大変。ボール球はしっかりと見逃して、ストライクゾーンにきたらヒットを打つか最低でもファールで逃げなければならない。しかし、相手が投げてくるストレートは150キロ越えの速球で、だけどさっきまで対戦していた比嘉とは真逆の棒球を投げてくるもんだから地味に対応しづらい。
さらに間違ってボール球でも打ちにいって空振りや凡打でもしようもんなら、田所のように監督に怒られてしまう。そんな精神的な不安も相まって、三街道のバッター達はその実力を十分に発揮できないまま川合を攻略できずにいたのであった。
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