安達弾~打率2割の1番バッター~ 第28章 夏の甲子園千葉大会決勝 船町北VS三街道⑱
『ずばり予言するよ。この回、船町北は失点を許し再び逆転されるね』
そんな解説小田のこの日2回目の予言は、またしても外れる結果となってしまったが、小田は必死になって言い訳をしていた。
「最初のゲッツーといい、最後のサードゴロといい、川合君は奇跡的についてましたよ。特に最後のサードゴロなんて、見逃していたら普通にフォアボールでしたからね」
「サードゴロを打ってしまった森君ですが、大泉監督に叱られてますね」
「そりゃあ怒るでしょうね。見逃せば満塁のチャンスだったんですから。いやーそれにしても、本当に川合君は運が良かったですね」
あれだけフォアボールを連発しながらも何だかんだ無失点に抑えることの多い川合は、解説の小田が言うように、ただ運が良かっただけだと言われがちな選手だ。しかし、実際のところは違う。川合が何だかんだ無失点に抑えられることが多いのには、ちゃんとした理由が4つもあった。
1つ目の理由は、球速が速いこと。これは当たり前のことだが、球速が速ければ速いほどバッターは対応する時間が短くなるため、空振りや打ち損じの可能性が高まる。平均速度が150キロを超える川合のストレートなら尚更のことだ。
2つ目の理由は、川合の球がキレのない極端な棒球であること。棒球というのは普通ならマイナス要素にしかならないのだが、川合の棒球は平均的なストレートの数値から極端にかけ離れているため、それが逆に打ちづらい要因となっている。
3つ目の理由は、川合がいつも比嘉の後に投げていること。川合と対戦するバッターは、異常にキレのある比嘉の特殊なストレートを目にした後に異常にキレのない川合の棒球を見ることになるため、ストレートのキレのなさがより際立つことでさらに打ちづらくなるという訳だ。
そして4つ目となる最後の理由は、コントロールが悪いこと。コントロールが悪いせいでフォアボールを連発してピンチを作っているにもかかわらず、コントロールが悪いおかげで抑えられているというのは何だか矛盾しているように思うかもしれないが、実はそうでもない。
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