安達弾~打率2割の1番バッター~ 第28章 夏の甲子園千葉大会決勝 船町北VS三街道⑰
ノーアウトランナー1塁から打席に上がった5番虹村も、角田同様に追い込まれるまではバットを振らず、フォアボールでの出塁を狙っていた。
「ボール!」
「ボール!」
「ストライク!」
「ボール!」
「ストライク!」
フォアボール直前でストライクを2つ取られ、フルカウントに追い込まれた虹村。
(フルカウントになったものの、相手は相変わらずコントロールが安定していない。ボール球だけには手を出さないようにしないと)
そんな虹村に投げ込まれた6球目は、外角よりのストライクゾーンにきていた。
(げっ、打ちにいくしかないか)
「カーン!!」
虹村の打った当たりは、球の上を叩きつけるボテボテのキャッチャーゴロ。キャッチャー西郷が素早く2塁へ送球し、セカンド野口もファーストに送球してダブルプレイに終わった。これにはさっきまで自信満々に逆転されると予言していた解説の小田も、慌てて弁解を始めた。
「いやーここでダブルプレーとは、川合君ついてますね。さすがの私でも、この川合君の強運は予言できませんでしたよ」
2アウトランナーなしとなり、このままこの回を切り抜けるかに思われたが、そこから川合は6番冴島、7番細田弟と2者連続でフォアボールを出してしまう。こうなるとまた、解説の小田は元気を取り戻して饒舌になる。
「やはり川合君はダメそうですね。せっかく運良くゲッツーが取れたというのに、もったいない。船町北の監督さんは今からでも遅くない。すぐに川合君を変えるべきですね」
「しかし、船町北はまだ川合君に続投させるようですね」
「こうなると、どうやらまたしても私の予言が当たってしまいそうだね」
ここで打席に立つ8番森も、他の選手達と同様にフォアボール狙いだった。
「ストライク!」
この日初めてとなる川合の初球ストライクに一瞬焦った森だったが、その後の川合は安定して不安定なノーコンぶりを見せる。
「ボール!」
「ボール!」
「ボール!」
(ようし、このままフォアボールで満塁だ)
しかし、川合もここで意地を見せる。
「ストライク!」
(くそ。逆に追い込まれたか。でもよくよく考えてみると、ここでフォアボールで出塁できたとして、次のバッターは細田先輩だ。このまま川合が続投してくれればいいが、比嘉に交代されたらまず打てないだろう。ならば、今俺がすべきはフォアボールで満足するんじゃなくて、ヒットで打点を狙いにいくべきなんじゃないか?)
そう思い立った森に、川合が6球目を投げ込んでくる。
「カーン!!」
川合が投げたストレートは僅かに外に外れるボール球だったのだが、変に打ち気になっていた森は無理に打ちにいってしまい、結果はサードゴロに終わった。
123456789
船町北 0001
三街道 0100
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません