安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道⑨
3回表。龍谷打線はまたもや細田兄弟相手に三者凡退。
3回裏。三街道打線は山田のカットボール中心の投球に苦しみこちらも三者凡退。
4回表。打者一巡して1番バッターの清村兄から始まる龍谷千葉にとってはチャンスの回だったが、結局誰も出塁すらできず、またまた三者凡退に終わる。
そして4回裏。5番、6番バッターと、カットボールを打ち損じた内野フライと外野フライで2アウトまできていた。
「山田がカットボールを投げ始めてからは、三街道打線もすっかり沈黙し始めたな」
「このまま投手戦が続きそうな感じだ」
「いや、龍谷打線はともかく三街道の方はそろそろ打ち始めそうだぞ」
「えっ?」
「3回まではカットボールを空振りするか、当たってもボテボテのゴロだっただろ。それがこの回は内野フライに外野フライと、少しずつだが前に飛ばし始めている」
「言われてみれば確かに」
「カキーン!!!」
「言ってるそばから本当に打ったよ」
「左中間真っ二つのツーベースヒットか」
2アウトながら、ランナー2塁とピンチを背負う形となった龍谷千葉。キャッチャーの清村弟は、早くも三街道打線が山田のカットボールを捉え始めていることに驚きを隠せなかった。
(このカットボールでしばらくは抑えられるかと思っていたのにとんだ誤算だな。思えばこの試合、スローカーブの変化を変えてみたり新しくカットボールを投げてみたりと色々試行錯誤してるっていうのに、三街道打線はあっという間に対応してきている。これは一体どうなっているんだ?)
三街道打線が山田のカットボールにも早めに対応できている理由。それはもちろん、バッター一人ひとりのバッティング技術の高さに他ならないのだが、他にもある重大な理由があった。それは、三街道の選手達が相手ピッチャーに関する情報を細かな所までチーム全体で共有するように徹底していたからであった。
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