安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道⑧
(山田君のスローカーブを完全に再現できなくて不安でしたが、それが運良く功を奏しました。3人のバッティングピッチャーが投げていたそれぞれ変化の違うスローカーブを打つ練習をしてきたからこそ、今回山田君が投げてきた複数の変化をするスローカーブにも早めに対応することができたようですからね。さあみなさん、この回先制点を取って、試合の主導権を握ってやりましょう)
しかし、龍谷千葉にとっては幸いにもこのピンチで迎えたバッターはバッティングの苦手な9番バッターの細田兄だったこともあり、山田は三球三振で細田兄を難なく打ち取った。それでもまだ2アウト満塁。ここで打者一巡して回ってきた1番バッターを迎えたところで、キャッチャーの清村弟はある決断をした。
(山田先輩、予定よりも早いですがあの球を解禁しましょう)
マウンドの山田にサインを送る清村弟と、頷く山田。
(やっと投げられるな。春季大会ではまだ未完成だったあの球で、このピンチを乗り切って試合の流れをこっちに引き寄せてやる)
山田はそう気持ちを込めながら、初球にいきなりその球を投げ込んだ。
(ストレートか。この甘いコースなら余裕で打てるぜ)
1番バッターがそう判断して打ちにいったその球だったが、やや内よりの甘いコースから胸元に向かって急激な変化を見せた。
「カーン!」
バットの根本に当たってしまった打球は、あえなくファーストゴロとなった。
123456789
龍谷千葉 00
三街道 00
「山田の奴、あんな球隠してやがったのかよ!」
「今のはカットボールか」
「打ちづらそうな球だな」
「黒山先輩が投げてたカットボールに似てるな」
「満塁のピンチを山田が切り抜けたことで、三街道にきていた試合の流れが変わりつつあるな」
「でも結局この後、龍谷が負けるんですよね」
「ただでさえ打ちづらい山なりのスローボールと様々な変化を見せるスローカーブ、それに加えてカットボールまで投げてくる山田を、三街道は一体どうやって攻略するんだ?」
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