安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道⑦
2回表。この回の先頭バッター清村弟を三振に打ち取ると、勢いそのままに5番6番と細田兄弟は継投をしながら難なくこの回も無失点に抑えた。
123456789
龍谷千葉 00
三街道 0
2回裏。順調に龍谷千葉打線を抑えていく細田兄弟とは対照的に、山田は苦戦していた。この回の先頭の5番バッター細田弟にいきなりスローカーブをレフト前に運ばれると、アウトを1つ挟んで今度はスローボールをライト前に運ばれる。1アウト1、2塁のピンチからさらにセンター前ヒットを打たれたものの、外野が前進気味のシフトを敷いていたおかげでランナーは3塁にとどまり、何とか失点は免れた。それでも、1アウト満塁とピンチが続いていた。
山田相手にヒットを積み重ねていく選手たちを、三街道の大泉監督は誇らしげに見つめていた。
(しっかり練習の成果が出ていますね。山田君の対策をやってきた甲斐がありましたよ)
話は再び、今年の春季大会決勝にまで遡る。
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123456789 計
龍谷千葉 112211111 11
三街道 000501010 7
細田兄弟を登板させなかったにも関わらず、なかなか善戦した選手達に対して、大泉監督は労いの言葉をかけたあと、龍谷千葉に勝つための具体的な対策の話を始めた。
「では早速ですが、細田兄弟以外のピッチャー陣はこれから、今日の山田君が投げていた山なりのスローボールとスローカーブを投げる練習をしてもらいます。そしてある程度投げられるようになったら、山田君を仮想したバッティングピッチャーになってもらいます。結局今日は村沢君こそ攻略できましたが、途中から登板した山田君からは2点しか奪えませんでしたからね。夏の大会で龍谷と対戦することがあれば、おそらく相手は山田君を先発させてくるでしょう。その時は、そうですね……最低でも5点以上は奪えるように対策しておきたいですね」
こうして、三街道の山田対策が始まったのだが、ここである大きな問題が生じた。山田対策のために山田と同じような球を投げる練習をしていたピッチャー陣だったが、山なりのスローボールこそある程度練習すれば投げられるようになったものの、スローカーブに関しては簡単にはいかなかった。うまくストライクゾーンに投げられなかったり、山田と同じような斜めに落ちていく変化ではなく、縦への変化が大きかったり横への変化が大きかったりなど、お世辞にも仮想山田と言えるまでの完成度には1人も至らなかった。
(うーん困りましたね。まあ仕方がありません。不安は残りますが、何も対策をしないよりはましでしょう。比較的コントロールのできている3人に交代でバッティングピッチャーをやってもらいましょうか)
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