安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道⑥
話は今年の春季大会決勝にまで遡る。
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123456789 計
龍谷千葉 112211111 11
三街道 000501010 7
龍谷千葉高校は三街道に勝利こそしたものの、ダブルエースの細田兄弟を2人とも登板させてこなかったにも関わらず善戦した三街道に対して、森崎監督は警戒を強めていた。
(このままでは夏の甲子園で三街道に負けてしまうかもしれん。うちが三街道に勝つためには、何としても細田兄弟を攻略しなくては)
森崎監督が考えた細田兄弟の対策は、とてもシンプルなものだった。
「今日から対細田兄弟用に、ピッチングマシーンをこの台の上に乗せてバッティング練習をしてもらう」
そう言って森崎監督が出してきたのは、高さ20センチほどの台だった。
「細田兄は199センチ、そして弟も194センチと細田兄弟は平均的な高校球児と比べて20センチほど身長が高い。そんな滅多に対戦することのない高身長から放たれる投球は、それだけで対応が難しくなる。ただ逆を言えば、普段から定期的にこのプラス20センチの高さからの球に慣れておけば、お前たちのバッティング技術とパワーさえあれば細田兄弟の攻略はそう難しくはないはずだ」
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(兄貴だろうが弟だろうが関係ない。お前たち兄弟ご自慢の高身長を生かした投球を、2カ月以上前から対策を練ってきた俺達が打ち破ってやる)
練習に裏付けされた確かな自信を持って、打席に上がる清村弟。そんな清村弟に対して、細田兄は初球内角高めへのストレートを投げた。
「ストライク!」
清村弟が見逃したストレートの時速は、155キロ。
(球速キレともに昨年以上に成長している)
2球目。外角低めへのストレート。
「ストライク!」
またもや見逃したストレートの時速は、157キロ。
(まだ上がるのか。しかもここしかないってくらいの外角低めへの制球力。あれだけ対策してきたのに、全く手が出せない)
そして3球目。
(次は十中八九、決め球のカーブがくるだろうな。ピッチングマシーンではあの細田独特のカーブを完全には再現できない。だからいきなり打つのは難しいだろう。でも、せめてカットで粘ってやる)
そうカーブをカットする気満々で待ち構えていた清村弟だったが、ここで投げられたのはまたしてもストレートだった。
「ストライク! バッターアウト!」
真ん中高めの甘いコースながらも、この日最高の158キロを記録したストレートに、清村弟のバットは空を切った。
(くそっ! 俺にはカーブを投げるまでもないってか。舐められたもんだぜ。この借りは、次の打席で絶対に返してやるからな)
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