安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道③

「でもこの継投策って、サイドスローの万場兄弟がやるからこそ真価を発揮すると思うんだけどな」

「そうそう。細田兄弟は2人ともオーバースローだし、そこまで効果があるとは思えないな」

 そんなことを言っている間に、細田兄の投球練習が終わり2番バッターへの1球目が投げられた。

「ストライク!」

 外角低めへのストレート。球速は152キロ。見逃しのストライクだった。

「初球からいきなり150キロ越えかよ」

「しかも外角低めのあのコースに投げられたら手が出ないな」

 続いて2球目、細田兄は内角低めへのストレートを投げる。球速は154キロを記録していた。

「カーン!」

「ファール!」

「まだ球速を上げてくるか」

「でもその速球に当てる龍谷のバッターも半端ねえな」

「ただこの勝負は、もう細田兄の勝ちが決まったようなものだな」

 そのキャプテン星の言葉に、

「えっ?」

「何で?」

 みんながそう聞き返している中、細田兄が3球目のカーブを投げた。思わず体をのけぞらして避けようとする2番バッター。しかし、球は内角高めのストライクゾーンにキッチリと収まっていた。

「ストライク! バッターアウト!」

「やっぱり打てねえよな。細田のカーブを初見では。左バッターの俺でも、初めて細田のカーブを見た時は、ただでさえ高いリリースポイントからさらに山なりに投げられるあのカーブは一瞬視界から消えた感じがして全く手が出せなかった。右バッターからしたら、高い位置から顔面をかすめるようにして曲がりながら落ちてくるあのカーブは本能的に避けてしまうだろうからな。相当手強いぞ」

 昨年の春季大会で対戦経験のある星は、細田兄のカーブの恐ろしさを熟知していた。

「そして当然、それは細田弟のカーブにも同様に当てはまる。加えてあのスライダーも、横の変化が凄まじいから左バッターは特に打ちづらいだろうな」

 キャプテンの星がそうこう解説している間に、また守備位置を交換してマウンドに上がった細田弟は、あっさりと3番バッターを三振に打ち取っていた。

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 三街道