安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道②
「キャプテン、そんな訳ないじゃないっすか」
「細田兄弟はどっちもピッチャーですよ。ファーストなんて守ってる訳……」
そう否定しようとしたのも束の間、テレビに映された試合では予想外の出来事が起きていた。何と、まだ打者1人にしか投げていない細田弟が交代すると言うのだ。
「いやいやおかしいだろ」
「故障でもしたのか?」
「あれ? ベンチには下がらずにファーストに行くのか」
「そしてファーストがピッチャーってまさか……」
そのまさかだった。さっきまでファーストを守っていたのは、キャプテン星の見間違いではなく紛れもない細田兄だったのだ。
「この継投策って、どっかで見た気が……」
「そうか! 大阪西蔭の双子の継投策のパクリだ」
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2017年5月24日。今から丁度2か月前のこの日は、船町北高校の鈴井監督が大阪西蔭の継投策からヒントを得て比嘉と川合を打者一巡ごとに継投する作戦を思いついた記念すべき日であったが、偶然にも同日、同じく大阪西蔭の継投策を自身のチームにも応用できないかと考えていた監督がもう1人いた。その監督とは、三街道の大泉監督だった。
(この継投策、うちの細田兄弟でも丸パクリして使えるな。ただし、毎回この作戦を使うのは得策ではない。いざという時だけ、そうだな……夏の甲子園予選の決勝戦や絶対王者の龍谷千葉に当たる時。その時がくるまでは秘密の作戦として温存しておくか)
こうして大泉監督は、この2カ月の間に細田兄弟にファーストの守備練習をやらせながら、このとっておきの継投策をいつでも使えるように備えていたのだった。
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(あの監督め! 他所のチームの作戦を丸パクリするとかプライドはないのかよ)
自分のことは棚に上げて、大泉監督の批判を心の中でする鈴井監督なのであった。
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