安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道⑬
5回裏。2アウトからの3番バッターのセンター前ヒットと4番角田のツーベースヒットで1点を追加されたあとも、千葉修道の攻撃は続いた。5番バッターが山田のカットボールをライト前ヒットにしてランナー1、3塁とチャンスを広げると、6番バッターは際どい球をしっかりと見極めてフォアボールで出塁。あっという間に満塁の大チャンスを作り出した。
「2アウトから1点追加されただけでも痛いのに、ここからさらに大量失点とかになったら一気に試合が決まってしまうな」
「逆にここで何とか踏ん張れれば、まだ龍谷にもチャンスがありそうだ」
「カーン!」
「アウト! スリーアウトチェンジ!」
「山田は何とか踏ん張ったな」
「これでまだまだわからなくなってきたぞ」
「いや、もう龍谷が負けるって結果はわかってるんだけどね」
6回表。2点に広がった点差を少しでも縮めたい龍谷千葉だが、上位打線でも未だにヒットどころか出塁すらできていない細田兄弟相手に、下位打線の7、8、9番バッターがどうこうできるはずもなく三者凡退に終わった。
「一向に味方が点を取ってくれないこの展開、龍谷の山田は精神的に相当きついだろうな」
「精神だけじゃなくて、体力的にもきつくなってくる頃だぞ。もうすぐで100球超えそうだし」
「そろそろ大量失点でもしそうな雰囲気だな」
テレビの前でそんなことを話していた船町北高校の部員達の言葉が、そのまま現実になりそうな試合展開が、この6回裏では繰り広げられた。
中々味方の援護に恵まれない中、粘りの投球を続ける龍谷千葉のエース山田。しかし、そんな山田から千葉修道打線は、ヒットやフォアボールで地道にランナーを溜めていく。そして2アウトながら満塁と限界までランナーが溜まったこの場面で、山田が迎えることになったのは4番の角田だった。キャチャーの清村弟がタイムを取ってマウンドの山田の元に向かう。
「あーもうここで交代する感じか」
「さすがに山田は限界だよな」
「俺が監督なら100%村沢に交代するね」
「俺も交代に1票」
「俺も」
「俺なら明日のことも考えて村沢は温存させるかな……でもここで負けたら終わりだし、やっぱり交代だな」
船町北の部員達が山田をここで交代させるべきだと盛り上がっている中、鈴井監督は力強くこう断言した。
「俺なら絶対に続投させる!」
一瞬静まり返った室内。その直後、マウンドから清村弟が守備位置に戻っていった。そして山田は、そのままマウンドにとどまった。
「やはり続投させたか。エースってのは責任のあるポジションだからな。ピンチの場面だからといって、そう簡単には下げられないものさ。例えそれで、チームが敗れることになったとしても……」
「カキーン!!!!」
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龍谷千葉 000000
三街道 00011
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