安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道⑫
『159』
清村弟を空振り三振に仕留めた細田兄の後ろの電光掲示板には、本日最高となるその球速が表示されていた。
「いやー圧巻のピッチングだな」
「細田兄恐るべし」
「球種が豊富な細田弟は兄貴の上位互換だと思ってたけど、ストレートの球速や球威、それにカーブのキレも兄貴の方が上だな」
この後は、5番6番と左バッターが続く打線を細田弟がピシャリと抑え、龍谷千葉は5回を終えても未だパーフェクトに抑えられていた。
そして5回裏。
「カキーン!!」
先頭の1番バッターが、山田の投げたスローカーブを初球打ち。鋭いヒット性のゴロが飛んでいくも、ショート清村兄が逆シングルで追いつくと、素早くファーストへ送球。
「アウト!」
続く2番バッターは、3球目のストレートを捉えた。
「カキーン!!!」
二遊間を抜けるかという強烈な打球が飛んでいくも、またもやショート清村兄が横っ飛びのダイレクトキャッチ。
「アウト!」
清村兄のファインプレー2連発で、あっという間に2アウトとなった。
「足の速さやバッティングに目がいきがちだが、清村兄は守備もうまいんだよな」
「まだ2年だっていうのに、プロ並みの守備範囲の広さだな」
「このまま三者凡退で終われば、再び龍谷にも流れがくるかもしれ……」
「カキーン!!!」
「あー言ってるそばから打たれちゃったよ」
「あの打球はさすがも清村兄でも追いつけないか」
5回裏2アウトランナー1塁となり、迎えるバッターは4番の角田。
(前の打席では俺の苦手な遅い球で2ストライクまで追い込まれて、最後は初見のカットボールで三振しちまったが、1度見たあのカットボールなら余裕でホームランにしてやれるぜ。さあ山田、投げてこいよ。ストレートでも大歓迎だぜ)
しかし、山田は2球続けてスローボールを投げ込んだ。
「ストライク!」
「ストライク!」
(角田、お前がストレートとカットボール狙いなのはバレバレだぞ。こうなったら意地でもストレートとカットボールは投げさせない。徹底して遅い球で勝負だ!)
続く3球目、山田はスローカーブを投げ込むも、角田は何とかファールでしのいだ。
(そうかいそうかい。カットボールもストレートも投げてる気はねえってことだな。仕方がない、苦手だし本当は打ちたくないんだけどなあ)
角田は心の中でそう呟きながら、バットの持ち方をほんの少しだけ短くした。
(山田対策で散々遅い球を打つ練習はしてきたけど、結局4、5球に1回しか打てるようにならなかったんだよなあ……)
4球目、山田が投げたスローカーブの軌道をギリギリまで見極めると、角田は無駄のない最短距離のスイングでボールを捉えにいった。
「カキーン!!!」
左中間に伸びていく打球は、フェンス直撃の長打コースとなり、ファーストランナーがホームに帰ってきて1点を追加した。
(やっぱりダメだったか。ホームランは)
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龍谷千葉 00000
三街道 00011
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