安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道⑪

「ついに1点入ったかー」

「ていうか何だよ今のバッティングは」

「山田の球は決して悪くなかったのに」

「あんなバッティング……下位打線のバッターがやれるレベルじゃねえよ」

 試合を見ている船町北部員達がそんなこと言っている中、9番バッターの細田兄が打席に上がった。

「カーン!!」

 山田が投げた初球のスローカーブを高々と打ち上げてしまい、4回裏の三街道の攻撃は1点止まりで終わった。

「細田兄がいてくれたから良かったものの」

「それ以外は打線に穴が見当たらないな」

「いや、細田兄だって言うほどバッティングがひどいって訳でもない。他のバッター達のレベルが高過ぎるんだよ」

「これで完全に三街道ペースだな」

「次の回はいきなり4番の清村弟からか。龍谷も意地を見せてほしいな」

 5回表。

(1塁空いてたし、やっぱり最初から歩かせるべきだったか。先に先制点を許したのは正直痛いな。くそっ!)

 前の回の配球の反省をしながら打席に上がった清村弟だったが、マウンドにいる細田兄が投球フォームに入るのを見て、慌ててバットを握り直した。

(反省は後だ。今はこの打席に集中しないと)

 そう思い直して再びマウンドに顔を向ける清村弟だったが、細田兄が球を投じた瞬間、動揺が走った。

(あれっ、ボールはどこだ?)

 ボールを見失い戸惑う清村弟。その刹那、視界の上から突然ボールが落ちてきた。

(うわっ!)

 思わずのけぞる清村弟。ボールはそこから内角高めのストライクゾーンをギリギリかすめながらキャッチャーミットに収まった。

「ストライク!」

(あらためてエグイ軌道だな。ただでさえ高いリリースポイントから、さらに高く打ちあがった球が急激な落差で斜めに落ちてくる独特のカーブ。もっと視野を広くして待ち構えておかないと、球を見失ってしまうな)

 2球目。細田兄は2球続けてカーブを投じた。その球の軌道を、今度はしっかりと目で追いながらスイングしにいく清村弟。しかし、カーブはバットの下を潜り抜けていった。

「ストライク!」

(そこからまだ落ちるか。バットに当てることすらできなかった。でも龍谷の4番として、このまま終わる訳にはいかない。次は意地でもバットに当ててやる!)

 そして3球目。細田兄が投じた球がストレートだとわかった瞬間、清村弟は豪快なフルスイングでそれを迎え撃ちにいった。

「ブン!!」

 空気を切り裂く大きなスイング音が響き渡る中、無情にも審判のコールがされた。

「ストライク! バッターアウト!」