安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道⑩
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2回裏の最後に打ち取られた1番バッター。そして3回裏に三者凡退に打ち取られた2番、3番、4番バッター。それぞれのバッターは出番を終えるとすぐに、自分が打ち取られた山田のカットボールについての情報をベンチにいる選手達全体に共有していた。
「最後の球はカットボールみたいな感じだった。角度50。変化量ボール約3個分。曲がり始めレベル3。体感球速は130キロ中盤」
「2球目にきたカットボール、角度60くらい。変化量ボール3、4個分くらい。曲がり始めレベル3か4。体感速度は130キロくらい。最後に三振したカットボールもほぼほぼ同じだけど、球速はプラス5キロぐらいだったかな」
「初球のカットは角度45度、変化量ボール2.5個分、曲がり始めはレベル2か3くらいかな。体感速度は130そこそこ。3球目のカットは角度60度。変化量ボール4個分。曲がり始めレベル3。体感速度は120後半。ラストのカットは角度50度、変化量ボール3個分。曲がり始めレベル4。体感速度は130キロそこそこ」
「最後のカットボール、角度は5,60度、変化量ボール3個分くらい。曲がり始めはレベル3。体感速度は130後半」
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こんな具合に、三街道の選手達は自分に投げられた1球1球に対する具体的な情報を逐一ベンチ全体に共有することで、相手ピッチャーが新しく投げてきた変化球に対してもあらかじめ具体的なイメージができた状態で打席に上がれるため、より対応しやすくなっていたのだった。
(次のバッターは9番の細田兄だし、1塁が開いているから最悪歩かせても問題ない。打たれる心配のない球がない以上、コースを厳しく攻めていくしかないな)
初球。ぶつけそうなくらい内角にミットを構える清村弟。球種はカットボール。山田も清村弟の配球の意図を理解しており、最悪ぶつけてもいいという気持ちで腕を振り切った。が、バッターは自分がまともに勝負してもらえないことを読んでいた。
(次が細田先輩だからな。歩かされるか、まともに勝負はしてもらえないだろう。外に外して投げるか、低めに外すか高めに外すか、もしくは……内角ギリギリにくるかだ!)
「カキーン!!」
内角ギリギリにきた体に向かってくるカットボールを、右肘を器用にたたみながらバットの芯で捉えると逆方向のレフト前へ運んだ。セカンドランナーはサードベースを迷わず蹴ってホームに突入する。タイミング的にはアウトだったが、レフトからの送球が若干ファースト方向に逸れたせいでキャッチャーのタッチが遅れた。
「セーフ!」
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龍谷千葉 0000
三街道 0001
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