安達弾~打率2割の1番バッター~ 第27章 夏の甲子園千葉大会準決勝 龍谷千葉VS三街道①
1回表。龍谷千葉の先頭バッター清村兄に対して、細田弟は初球カーブを内角ギリギリに投げる。
「ストライク!」
「今のカーブ、左右逆なだけで兄貴のカーブにそっくりだな」
「確か兄貴の方の持ち球はストレート以外だとカーブだけだったし、弟もカーブしか投げてこないのかな?」
ふと誰かがそんなことを呟いたが、そんな甘い想定は一瞬で崩されることになる。
2球目、細田弟はまたしても内角ギリギリに、今度は真横に急激な変化を見せるスライダーを投げて見せたのだ。
「ストライク!」
2球連続で見逃す清村兄。
「今のスライダー、凄い変化だったな」
「左対左であのスライダーは、打ちづらいだろうな」
「弟の方は、カーブに加えてスライダーまで投げられるのか。兄貴以上に厄介そうだな」
そして3球目。細田弟は三度内角ギリギリへ、今度はストレートを投げる。
「カーン!」
球速148キロのストレートを、清村兄は難なくカットする。
「さすがは清村兄」
「簡単には終わらせないってか」
続く4球目。細田弟はまたしても内角ギリギリへ球を投じる。
「カーン!」
再びカットする清村兄。
「今の球は何だ?」
「恐らくチェンジアップだな」
「カーブにスライダーときて、今度はチェンジアップまで投げられるのかよ。おまけにストレートも結構速いし、完全に細田兄の上位互換じゃね?」
そして5球目。4球連続で内角を攻めてきた細田弟だったが、ここにきて外角の低めに球を投じた。
(やっと外角にきたか)
厳しい内角攻めからやっと解放された清村兄は、この日初めてとなるカットではなくヒットを打ちにいくスイングをした。
「カーン!!」
ボールを叩きついける形となってしまった打球は、ファーストゴロとなった。
「今の球、ストレートじゃなかったような?」
「あの変化は、恐らくカットボールたい」
「マジかよ」
「てことは、カーブ、スライダー、チェンジアップにカットボール、今の1打席だけで4種類も変化球を投げたってことかよ」
「191センチの高身長から150近い速度のストレートを投げてくる左ピッチャーってだけでも厄介なのに、これだけ多彩な変化球まで操るとは」
「つい最近まで中学生だったとは思えないほど完成されたピッチャーだな」
細田弟の実力をみんなが絶賛する中、キャプテンの星はある別のことが気になっていた。
「なあみんな、さっきちらっと映ったファースト、滅茶苦茶デカくなかったか?」
「そう言えばデカかったですね」
「細田兄弟以外にもあんなデカい選手がいたんですね」
「いや、もしかしたら俺の見間違いかもしれないけど、あのファーストって細田兄じゃね?」
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