安達弾~打率2割の1番バッター~ 第26章 夏の甲子園千葉大会準決勝 船町北VS千葉修道⑧

 7回表1アウトランナー1塁。イケイケムードで追加点を狙う千葉修道打線に対して、吉田はただ淡々と自分の投球だけに集中した。

「カーン!」

「ファール!」

「カーン!!」

「ファール!」

「カーン!」

「ファール!」
 
 4番バッターの真山は、中々甘いコースに投げてこない吉田の球を捉え切れずにいた。そして、フルカウントからの10球目。

「カキーン!!」

 やっと前に飛んだ真山の打球は、しぶとくショートとセカンドの間を抜けていくセンター前ヒットとなった。

(クソっ! シングルヒットを打つのがやっとだった。このピッチャー、中々しぶといな。でもこれだけ投げさせられた挙句にヒットを打たれたんだ。さすがにこれは堪えるだろ)

 1アウト1、2塁。4番の真山に10球も投げさせられた挙句さらにピンチを広げられながらも、吉田は全く動じていなかった。それどころか……。

(千葉修道の4番がヒットを打つまでに10球も費やすなんて……俺のピッチングまだまだイケるな)

 そんな風に前向きに捉えていた。

(ヒットこそ打たれてるばってん、吉田先輩のピッチングはずっと安定してるたい。だからこの回、何とかこのまま最小失点で切り抜けてみせるたい)

 続くバッターは、5番の石塚。前の打席では、低めの変化球を打たされてゲッツーになっていた。

(2度とあんなヘマはしない。ここで打点を上げて汚名返上だ!)

 そんな石塚に対しての初球、吉田は外角の低めにチェンジアップを投げた。

(この球は、前の打席で引っかけてしまったチェンジアップ。だがその球は、2度と通じないぞ!)

 石塚は前の打席での反省を生かして、うまくバットをコントロールしながらそのチェンジアップをすくい上げた。

「カキーン!!」

 打球はセンター前に落ちようかという絶妙な当たりだった。

(落ちろ落ちろ落ちろ!)

 打った石塚は、そう念じながら走っていた。

(こりゃセンター前ヒットだな)

 そう確信したセカンドランナーの越智は、サードベースを回る勢いで全力疾走していた。

(落としてたまるか!)

 センターを守る星は、そう気合を入れて持ち前の俊足を飛ばしながらボールの落下地点へとグラブを伸ばしながらダイブする。

「パシ!」

「アウト!」

(えっ! マジかよ)

 サードベース付近まで到達していた越智は慌ててセカンドへ戻り始めるも、星はすぐにセカンドへと返球してダブルプレー。キャプテン星のファインプレーにより、吉田はこの回を何とか1失点で切り抜けた。

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 千葉修道 0000001
 船町北  000000