安達弾~打率2割の1番バッター~ 第26章 夏の甲子園千葉大会準決勝 船町北VS千葉修道③

「ストライク! バッターアウト!」

 星が空振りの三振を食らった中原の3球目は、またまたフォークボールだった。ただし、1、2球目にきたフォークとは少し様子が違った。

(カットしようとした下げたバットの、さらに下までストンと落ちてきた。恐ろしい落差だ。最初の1、2球目がカウントを取るためのフォークだとしたら、今のは三振を取りにいくフォークか。随分器用な真似してくれるじゃないの。この短期間で、随分成長しやがって)

 続く2番野口に対しても、投げた4球全てフォークという随分と偏った配球で空振り三振に打ち取った。

(よしよし、良い感じ良い感じ。この最高の流れで、あの因縁の相手安達も打ち取ってみせる)

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 前回の春季大会船町北戦にて、中原は試合には勝ったものの、9回を投げて8失点という不本意な結果に終わった。ただその結果以上に、中原にはショックなことが2つあった。

 1つ目。自分以上に凄いキレのストレートを投げる天才ピッチャー比嘉の存在を知ってしまったこと。そして2つ目は、同じく天才バッター安達の存在を知ってしまったことだ。

(ストレート以上に自信があったフォークを、安達は初見でセンターフェンスギリギリまで運び、2打席目には屈辱的なランナーなしの場面での敬遠を余儀なくされ、そして3打席目には完璧な当たりでホームランにされた。あんな天才相手に、俺はどう立ち向かえばいいんだ?)

 悩んだ末に中原がたどり着いた答え。それはフォークボールにさらに磨きをかけることだった。

(チームメイトにあんなストレートを投げる比嘉がいる以上、ストレートをこれ以上極めたところで抑えられる気がしない。かといって、付け焼刃の新しい変化球を覚えたところでもっと抑えられる気がしない。となれば、俺にはもうフォークしかない)

 今までやっていたフォークの投げ込み練習に加えて、握力や指を鍛える新たなトレーニングを取り入れるなど、とにかくフォークボールの質を上げるための練習に明け暮れた中原。その結果、中原はカウントを整えるためのストライクを取りにいくフォーク、落差のある三振を取りにいくフォークなど、フォークボールを必要に応じて自在に操れるようにまで進化していた。

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