安達弾~打率2割の1番バッター~ 第26章 夏の甲子園千葉大会準決勝 船町北VS千葉修道②
(甘いコースの絶好球だったのに……捉えきれなかった。ていうかこいつのストレート、こんなに速かったか?)
野宮は電光掲示板に表示された球速を確認すると、135キロと表示されていた。
(そんなもんか。140以上は出ているように感じたが……)
(いきなり危なかったばい。でもおかげで貴重なデータが取れたたい。吉田先輩のストレートは、千葉修道打線にも十分通じそうたい)
そう感じたのは、西郷だけでなく吉田も同じだった。
(比嘉と同じくらいのキレのあるストレートを目指してここまで頑張ってきたが、結局この大会の初戦の時に西郷から言われた、比嘉が10だとすると7くらいだってレベルからはこの短期間ではほとんど成長できなかった。だから正直今日まで、千葉修道打線相手に俺のストレートが通じるか心配で心配で仕方がなかった。でもこの感じだと、まあまあいけるんじゃね?)
野宮との対戦で自信をつけた吉田西郷バッテリーは、千葉修道の上位打線相手にストレート中心のガンガン押していく強気の配球で攻めていった。
「カーン!!」
「アウト!」
(何だよこいつ……)
「ストライク! バッターアウト!」
(春季大会の時と、まるで別人じゃねえか)
2番バッター越智をセカンドフライ、3番バッター立花を空振り三振に打ち取り、吉田は初回を三者凡退の完璧な立ち上がりで締めくくった。
123456789
千葉修道 0
船町北
初回から滅多打ちにする計画を見事に崩された伊藤監督だったが、まだまだ余裕の表情を見せていた。
(さすがはうちを2度も倒し、前回の春季大会でも敗北寸前まで追い込んだ船町北と言ったところか。吉田君、かなり成長したみたいだな。だがそれでもこのまま最後まで抑え込まれてしまうほど、うちの打線はヤワじゃない。お前達、信じてるぞ。そして中原、お前の進化した投球を船町北打線に見せてやれ)
1回裏。船町北の攻撃。
(中原との前回の対戦では、フォークを捨ててストレートに狙いを絞ることでヒットを打たせてもらったが、今回も同じ作戦でいくか)
しかし、そんな星の狙いがまるで見透かされているかのように、中原は2球連続フォークボールでストライクを取りにいった。
「ストライク!」
「ストライク!」
(いきなりの2連続フォークか。だが気のせいか、前に対戦した時よりもフォークの落差が大したことないな。これならカットするくらいなら余裕そうだ。とりあえず次もストレート狙いは変えずに、もしもフォークがきたらカットで逃げよう)
そんな星に対して、中原が投げた3球目は……。
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